田舎暮らしの基礎知識【境界関連】
分水線とは2つ以上の河川の流れを分かつ境界で、山地では尾根にあります。合水線はその逆で、谷・沢・川に引かれます。いずれも自然の境界線で、大木や大岩を境界とする場合もあります。
これらは風化や浸食などで変化することもありますが、人工的な境界標より耐久性・不動性に優れています。市町村の境もこれを採用しているケースが多く、都路では元禄時代に「峰境か川境か」という争議まで起きています。
ただ、近代に入って採掘などの大規模な土木工事が行われた場所では、合水線が大幅にずれているケースもあります。境界でもめる可能性もあるので、注意が必要です。
広い山林の境界を見分ける一つの方法。田舎の山も注意深く見ると、杉・檜など一種類の樹木が植えられている林、複数の樹木が混然一体となった林、伐採後に雑木が生えた林、などがあります。また、同じ杉林でも樹齢によって景観が異なります。こういう山林の形態が境界の手がかりになるのです。
植林のやり方は地域によって異なり、境に1列またはお互い1列の計2列にしたり、防火線として境を空白にしたり、木の成長を考えて境界から3尺(約90cm)手前に植えるところもあります。しかし、不正確な伐採で境が少しずつ動いてしまうケースもあるので、林相はケースバイケースで考えた方がいいでしょう。
すべての土地は1区画ごとに地番が付され、それを1筆の土地とし、登記簿の表題部に登記されています。その地番と地番の境目が境界で、それを示すために現地では石やプラスチック、金属などでつくられた境界杭が打たれます。
境界は公に定められたものであり、地主や不動産業者が勝手に動かすことはできませんが、現実にはそういうことも起こりえます。それを防ぐためにも、境界杭にはいくつかの性格が要求されます。1つは不動性で、なるべくコンクリートで寝巻きするのが望ましいです。2つ目は永続性。杭自体がすぐ劣化するようなものでは困ります。3つ目は明確性で、誰もが認識できるものがいいです。
このほかにもいろいろありますが、田舎の広い土地は境界杭で見分けられないものも多いです。
田舎物件では少ないのですが、土地を分割して坪いくらで売る土地があります。当然ながら測量を伴うわけですが、それを実測売買といいます。契約時点で実測が完了していないことから、暫定的に公簿上の面積で契約し、後で実測面積との差を清算する方法がとられるケースが多いようです。また、分譲地などで測量が終わっていない場合、大まかな面積で契約し、測量後に精算というケースもあります。
実測精算は(実測面積-公簿面積)×単価で計算し、残金支払時に精算します。単価は契約時の売買代金を公簿面積で割って計算するとわかりやすいです。実測図作成にあたっては、測量士または土地家屋調査士に依頼して隣地所有者や道路管理者の立会いのうえ測量を行なわなければなりません。
ただ、「縄延び・縄縮み」で述べたように、田舎物件では公簿売買が主流。何町歩もある広い山林を測量すると莫大な費用がかかってしまうからで、坪数千円の世界では売主に測量を要求してもまず断られます。実測は土地の一部をわけてもらうような場合に出てくる、と考えればいいでしょう。
田舎の土地は公簿と実測面積が異なる「縄延び・縄縮み」が多いわけですが、その解消に向け国も動いています。昭和26年に国土調査法が発令され、国土の正確な面積を測る地積調査が始まったのです。測量は基準点(三角点)を用いた正確なもので、その精度は光波測距器という道具が登場してから飛躍的に高まっています。
国土調査の進ちょく率は、平成12年現在で43%。実は田舎のほうが調査が進んでおり、人口集中地区では17%に過ぎません。都会だから面積が正確とも一概に言えないのです。ただ、田舎の国土調査もここ10年以内に行われたものは精度が高いですが、戦後まもなく実施した地域では誤差が出やすいのです。公図と見比べると、現況がまるで違うこともあります。
正確な面積で買いたい人は実測売買でない限り、自己負担で土地家屋調査士に測量を依頼することになりますが、費用は最低でも数十万円単位。無駄な出費をするよりは、メジャーで大まかな面積を計測したり、自己負担のない国土調査を待つのが得策です。調査予定は役場に問い合わせるとわかります。
田舎物件は公簿面積と実測面積が一致しないケースが多いです。公簿より実際の面積が多い場合を「縄延び(なわのび)」、その逆を「縄縮み(なわちぢみ)」といいます。後者は実際より狭い土地に対して租税を高く払っても小作料を多く集めたほうが得策と考えた昔の地主の仕業でしょうが、事例はそんなに多くありません。田舎物件で圧倒的に目立つのは「縄延び」で、山林・原野では実測が公簿の数倍に達しているケースすらあります。登記簿で3500坪の土地が、実際は8000坪もあったりします。これは明治時代に地租改正を急ぐあまり、稚拙な測量をしたためです。
当時は形の不規則な田畑でも長方形に見立て十字に荒縄を張って測定する十字法、すべて三角形に分割して測定する三斜法などが採用されました。測量はおもに人民が行い、少数の役人が検査するやり方。その際、過少申告して税金を安くしようと、計測に使う縄を故意に長めにしました。それで縄延びという言葉があるのです。当時の測量技術がそれほど未熟だったわけではなく、政策を優先することにより「人間の欲」が絡むと、こういう現象が起きてきます。
田舎の土地は単価が低いため、測量せずに取り引きする公簿売買が主流。都会人は数字でものを考える習性が強く、とまどいを覚えるようです。しかし、いくら面積が増えても使えない傾斜地が含まれていれば意味はないわけで、田舎物件はなるべく現物で判断したいものです。なお、国土調査が行われた地域では、縄延びは起こりにくいようです。

