田舎暮らしの物件選び
農家物件の大きな特徴の1つに、付属建物の多さが挙げられます。付属とは読んで字の如く、母屋以外の建物を指します。例えば、倉庫、屋外の便所、勉強部屋、納屋、牛舎など。登記簿では表題部に「付属建物」として登記されます。
付属建物は建物の従物であると考えられるため、母屋が売買されると同時に付属建物も売買の対象となるのが普通です。実際は未登記になっている場合が多いのですが、その場合でも母屋の登記の対抗力は付属建物にも及びます。また、母屋に抵当権が設定されれば、付属建物にもその効力が及びます。中古住宅を購入する場合、延床面積の数字に付属建物の床面積も算入されているケースがあるので注意してください。
住宅か別荘かで建築工法がとくに変わるわけではありませんが、中古別荘は中古住宅と比較しても傷みの激しいものが多いようです。安いという理由だけで購入するとリフォーム代で予定外の出費を迫られる場合もあるので、注意が必要です。
建物は使用しないと、傷みが発生しやすいものです。これは、室内外の温度差、湿度差が建築部材に悪い影響を与えるため。とくに別荘は年に数回の空気の入れ換えが必要ですが、それすらしないオーナーも多いのです。また、別荘は山奥に建てるケースが多く、厳しい自然条件に晒されます。傾斜地では不安定な独立基礎を組む場合もあり、傷みが進行しやすいのです。
中古別荘を見学する際は、基礎部分に破損がないか、雨漏りはないか、など重要な部分をチェックすることです。さらに個人の仲介ではなく、業者がリフォームの見積りをきちんと出してくれるものがベターでしょう。
中古住宅とは、現代建築で建てられた田舎の住居を指します。基本的な造りは都会の住宅と変わりません。市場では築後20年前後のものが数多く流通しており、全国各地から物件が出てきます。
中古住宅が古民家と決定的に違う点は、建物の気密性です。隙間なく壁を設け、防寒対策として断熱材を施したものが多いようです。多くはトイレも屋内に設けられており、冬でも快適な生活が送れます。新建材を多用するため見た目はいまいちですが、大がかりな補修をしなくても住めるのが特徴です。ただし、空家になってから1年以上経ているものは、中古につきものの傷みを疑ったほうがいいでしょう。実際、中古住宅の補修費は500万円〜1000万円程度かかるのが普通。また、ブロック基礎の建物は湿気を土台に伝えやすいので、できればこの部分にも手を加えたいところです。
これは「就農向けの物件」を略した言葉ですが、新聞や本には出てきません。これは造語です。農家をめざす都会人にしてみれば、その物件が就農要件を満たしているかどうかは気になるところです。つまり、5反歩以上の農地が含まれている物件を指します(2町歩以上が必要な北海道の物件などを除く)。
就農物件は大きく分けて3種類あります。まずは農家跡地。農家は広い農地を持っているのが普通なので、離農したものを売りだした場合は当然ながら就農可能となります。ただ、農家は一度に所有地をすべて売るとは限らず、切り売りすることも多いのです。通常は山林、農地、宅地建物の順で手放します。そこで、農地と宅地建物だけが物件となるケースも出てくるわけです。建物は古民家だけでなく、築年数が比較的新しい中古住宅がついている場合もあります。
3つ目は農地だけを売り出すケース。これも5反歩以上なければなりませんが、家を建てるには5条申請で一部を農地転用しなければなりません。そのため農振指定の有無が重要なポイントになります。仮に農振除外ができない土地なら、農地の活用そのものが難しくなります(とくに第一種農地)。
なお、就農できるかどうかは「住民票を移して定住すること」も要件で、それは買主の都合によります。定住する気がないのに就農物件を求めるのは、そもそも間違いなのです。別荘利用で農地の所有権をほしがるのは、都会人の身勝手に過ぎません。
古民家の最大の特徴は、何といっても太い柱と梁でしょう。昔の農家は囲炉裏を使っていたので、黒光りしたものが多く、風格を醸し出します。材料もケヤキやクリなどいろいろありますが、現代建築で使えば目の飛び出るような金額になります。その点、古民家は一般に価格が安いのが特徴。それで人気が出やすいのですが、購入する場合は考えておかねばならないことがたくさんあります。
古民家はもともと農作業をするのに都合がいい造りになっており、住まいの快適性を追求した建物ではありません。壁の間仕切りがほとんどなく、便所もたいてい屋外に設けられています。隙間が多いのも欠点で、冬の寒さは体験した者にしかわからないものです。また、農家物件の取得はムラへ直接入っていくことを意味するので、人づきあいの苦手な人や週末利用の人にも向きません。戦後に建てられた開拓農家なら気は楽ですが、歴史の古い集落で自分勝手は許されません。つまり、憧れだけでは住めない建物なのです。
古民家は築年数が古いため、傷みがつきもの。補修費は状態が比較的いいもので2〜300万円、35坪くらいの小さな民家を水回り・床下・内外装まで補修する工事で5〜600万円、60坪以上の大きな古民家を全面補修する場合で1000万円以上かかります。自分で直せばコストは安くなりますが、日曜大工でコツコツやれる都会人はひと握りでしょう。